「私に言う必要ないと思いますけど…」
こんな年齢になってまで揉め事なんて起こしたくない。
ましてや、あのリアって人の存在もあるし、天野さんが翔と揉めてたって言ってたし、もうホントに面倒くさいの。
「あ、そうだよね。ごめんね」
さっきとは打って変わって微笑むアカネさんがよく分からない。
何を理由にそんな事、言ったのか。
私と翔が別れてるって事を知りながらそんな事を言ってくるアカネさんが分からない。
言葉は優しく柔らかいのに、私の心はしっくりとこない。
多分、きっと思う。
5年前も翔に対しての気持ちとか恋愛に対しての気持を深く考えていたならば、きっとあの頃も同じく悩んでたのかも知れない。
職業柄ホストだった翔の周りには沢山の女達が居たに違いない。
でも、だけど自分に必死だったあの頃は、そんな事に眼中なかった。
だからこそ、こうやって初めて目のあたりにする出来事があまりにも辛すぎる。
「では…」
頭を下げてアカネさんに背を向けた時、
「私、翔と寄り戻すから」
その言葉が耳に張り付いた。



