「それってさ、いつの話?」


暫く閉じていた口をゆっくりと開くと、天野さんは私に視線を向ける。


「今日…ですよ」

「今日?」

「はい。バイトが終わってすぐの事です」

「バイトって繁華街だったよね?」

「はい。楓さんが行ってたクラブの近くです」


…近く?

だとしたら、リアって人に違いない。


翔と会ったのは昨日の夜。

外出許可と言った翔は、まだ病院には戻ってない。


そうか、もう戻ってるか…

そんな事は分らないけど、私の事で揉めてたって、何?


もう、別に揉める必要すらないじゃん。

私と翔は別れてるんだから。


翔だって、私の事なんてどうでもいいから素っ気ない態度とってたくせに。

なのになんで私の事で揉めてんの?


意味分かんない。

いい加減、面倒くさいんだよ、ホントに。



ちゃんとした恋愛なんてしてないから分んないけど、菜緒が言ってた通り、一番やっかいな事だ。

とにかく開放させて。


なのに。そう思ってんのに苦しいのは何故?