「それは違うでしょ?」
玄関まで行った私は、もう一度落ち着いた声で同じ言葉を吐き出す。
今から靴を履こうとする翔の足はピタリと止まり、ゆっくりと私の方へと視線を向ける。
「違うって?」
そう低く呟いた翔の目は辛そうに見えたのは気の所為だろうか。
「入院してたら普通気になるでしょ?」
そう言ったけど、実際心の中はそうではなかった。
入院しているからとかじゃなくて、ただ翔の身体が気になるだけ。
気になって、気になって、気になり過ぎるのは昔と変わらない。
「美咲には関係ねぇから」
私が何を言っても答えようとはしない翔。
そりゃ、もちろん分かる。
そう言われるのは分かる。
私が、私から避けたのに、色々聞くなんておかしい事も分るの。
だけど、嫌いになって離れたんじゃないから…
バタンと閉まった玄関の音が、やけに虚しく心に響く。
そのまま私は、気力が抜けるかの様に床に腰を下ろす。
何だかよく分からないままの感情を押さえようとするほど、熱い何かが目の奥から込み上げてきそうになった。



