「とにかくそれ、いらねぇから」
クルっと私に背を向けた翔はそのまま仏壇へと向かう。
膝を曲げて腰を下ろした翔は両手を合わせて少しだけ頭を下げた。
こうやって、手元に戻ってくる事はなんとなくだけど、予想はついてた。
翔なら絶対に返すだろうと。
諒ちゃんが“行けよ”って言ってきた時に何となく分かってた。
だから、だからこそ翔になんて会いたくなかった。
会っちゃうと、返される反面、気持が高ぶるから。
でも予想外に私の考えは違ってた。
こうやって、ここに翔が居る事なんて考えてもみなかった。
まさか、ここに来るとは…
「…じゃあ、な」
スッと立ち上がった翔は通りすがりにそう小さく呟く。
だけど、その翔の足を止めたのは私だった。
何でか、分んない。
何で翔の足を止めたのか分んない。
通りすがりに行く翔の腕をギュっと握ったのは私だった。
「…何?」
私が引っ張る所為で翔が振り向いたのが分かる。
視線を下げているから翔の表情なんて読み取れないけど、きっとよくない表情をしているのに違いない。



