「返そうと思って…」
ホントの事を言った私に翔の眉間に少しだけ皺が寄ったのが分かった。
「は?だから何で?」
「だからって、翔に借りてたお金」
「俺、貸した覚えねぇけど」
「翔はそう思ってるかも知れないけど、私は借りたから。留学資金は返せないとしても、せめて初めて会った時の30万と後、電話代」
「……」
「後の分は少しづつゆっくり返していくから」
「は?何言ってんのお前」
「……」
もう全てが遠い昔のような存在。
5~6年前の事にでもなれば、記憶すら遠のいて行く。
翔は覚えてるかどうかなんて分んないけど、全て何もかもしてもらったのは翔のお陰であって、だからこそ今の私がいる。
だから、だからなのかも知れない。
ちゃんと返そうって、助けてもらった分、ちゃんと返そうって、そう思った。
「つか、もう返してもらった」
「え?」
「初めの30万はとっくに葵ちゃんから返してもらった」
「そうなんだ。…でも、いいよ」
「何がいいのか分かんねぇけど、俺は受け取れねぇから」
「何で?葵のは受け取れて私のは受け取れないって事?」
「美咲と葵ちゃんとでは立場が違う」
「立場って…」
…なにそれ。
思わず小さく呟いた私は軽く一息吐き、視線をしたに落とした。



