夢でも見てるんじゃないかって、一瞬思った。

何でか知んないけど震える手が自分じゃないような気がした。


もう別れてんのに、何でか心が切なかった。


「…翔が、スキなの」


ズキンと揺れた心臓。

微かに聞こえたアカネさんの言葉。


更に翔を求めるかの様にアカネさんは翔に抱きつき、


「…好き」


小さく呟いた。


「…アカネ?」


思わずハッとしてしまった。

翔のその声で、アカネさんの名前を呼ぶ声に。


私じゃなくアカネさんの名前を呼ぶ声に。

だから私は慌ててこの場所を離れた。


その先の事なんて聞きたくない。

何もかも全て耳には入れたくなかった。


何でこのタイミングなわけ?

何で今なの?


もしも私じゃなく付き合ってた相手がアカネさんだったら、リアって人はアカネさんの所に行ってた?

なんだかよく分んない妄想が私を押し潰す。


正直、あのリアって人の言った事が正しくて別れた選択。

だけど、また新たに違う女が出てこられちゃ、正直どうでも良くなった。


私は…


私はやっぱり相応しくない。