「…美咲、風呂入れば?」
「あ、う、うん」
記憶に浸っていると不意に聞こえた声に、私は慌てて返す。
「着替え、あるから」
「ありがと」
湯船に浸かりながら色んな事を思い出してた。
まだ日本に帰って来たって言う実感があまりない。
5年間と言う日々を海外でいたから、こうやって日本で翔と居ると言う事がなんだか夢の様に感じてしまう。
5年前の記憶を辿っても微かな出来事は思い出せない部分もあり、5年と言う月日で風化していった部分もある。
そう、時代が時代を変えてる――…
「…翔、上がったよ」
着替えて髪を乾かした後、部屋に入るとベッドで眠っている翔の姿が目に入った。
身体を揺すると、翔は微かに目を開き髪を無造作に掻く。
「ごめん。寝てた」
身体を起した翔は深く息を吐き、重い足取りで立ち上がる。
「お風呂…」
「うん、入る」
そう言った翔は部屋から出て脱衣所に向かった。



