「あー…そうじゃないけど。って言うか私の事はいいから」
そう素っ気なく返したのに、
「センセーさっき何かあれば言ってって、言ったじゃないですか」
返された言葉に思わずため息を吐き捨ててしまった。
「それに…」
続けて呟いた天野さんの声に、私は少しだけ視線を向ける。
「…それに?…何?」
「美咲センセーは頑張ってるの?って、そう聞かれました」
「え…。そ、それ翔が?」
「…翔?それって楓さん?」
ポツリと翔の名前を呟き、天野さんは首を傾げる。
「あ、あぁ…。うん、ごめんそれ本名だ」
「あ、そっか」
さっきとは打って変わって表情を明るくする天野さんはニコっと微笑む。
「ほか、何か言ってた?」
何でだろうか。
別れてんのに、天野さんから翔との会話を聞きたい。
「美咲センセーって綺麗ですね。って言ったら“だろ?”って言ってました。女性のサバサバしてる人、好きなんです。って私が言ったら“サバサバしすぎだろ。けどそれがいい”ってね」
「……」
「よっぽどセンセーの事、好きなんじゃん。羨ましい」
笑顔でそう言った天野さんがこれ以上見れなくなってた。
それに、こんな事言われたら今更、別れたんだよ。なんて、言えない。



