「こっちで本当に求めるものがないの。別に日本にいてやるべきこともないし、待つものも何もない。だったら折角もらったこの条件を受け取ろうかなって」
「受け取るって…」
そう言った葵は更に顔を顰め、視線を私から逸らす。
「まだ返事はしてないけど、決めようと思ってる」
「美咲は…美咲はまた私から離れちゃうの?」
葵の声は小さくて、沈んだ声。
5年前は笑顔で言ってくれたけど、今はそうじゃないみたい。
「離れちゃうのって、葵は私が居なくても大丈夫じゃん。諒ちゃんだって居るしさ、香恋ちゃんだっている。葵のママもパパも居るし皆居るじゃん。そんな幸せな事ないよ?」
「でも…」
「私は…私は何もないの。ママも居ないし、…私が決めた事だけど翔の存在もない」
「……」
「案外さ、私ってひとりの方が合ってんだなって思ってきたし…」
「……」
「日本語講師の話をされた時、何でか知んないけど、行こうと思ったの」
日本に帰って来た時は、もう絶対にここに居るってそう思ってた。
だけど、何もない今じゃ私のこれからの先が見えない様な気がして、せっかく貰ったチャンスを掴みたいってそう思った。
今、生きてるのは限りなく翔のお陰で、この人生を無駄にしたくないって、
そう思ったんだ。



