「葵には言ってなかったけど、翔をNO1にした女がさ“返して”って、まだ絶頂期だったのにって…ね」
「え、なにそれ…」
「入院してるのも知らなくて、その女が付き添ってたんだって。なんかここまでくるとどうでもよくなってさ、面倒くさくなったの」
「……」
「そこまで言われちゃ私の居る意味何もないじゃん。私は何一つしてないのにさ、言い返せない」
だから最初から分ってた事なんだ。
住む世界が違うって。
「美咲は…それで本当にいいの?」
「もう決めたから」
「お節介かもしれないけど、芹沢さんはまだ美咲の事スキだと思うよ。5年間、ずっとずっと美咲の事待ってたんだよ?」
「……」
「なのにその5年間を美咲は踏みにじってんだよ?芹沢さんの気持ちも考えなよ!!」
鋭く胸に刺さった葵の張り上げた声。
その声で思わず眉間に皺が寄る。
翔の気持ち?
じゃあ、私はどーなんの?
「翔の気持ちって何?じゃ、私はどーなんの?」
「……」
「散々言われて、その通りの事言われて何も言い返す事なんてできないじゃん!私だって、私だって、これでも真剣に悩んだんだよ!!」
ついむきになって張り上げた私の言葉に葵は俯いて視線を下げる。
そんな葵の表情に思わずため息を吐き捨てた。
「ごめん、葵…」
また言い合ってしまった。
こんな光景も昔から変わってない。
ただ、葵は私の事を思って言ってくれてるのに。
その優しい葵の気持ちは分ってんだよ?



