「でもホントに面倒くさい…」
私が日本に帰って来た時にはすでに翔はホストを辞めていて、お母さんの死だって、父が現われた事だって、その中でのあの女の事。
ホントにホントにムシャクシャする事を気づけば全て菜緒に話してた。
「なんか凄い5ヶ月間だね…」
「でしょ?でも別れてスッキリする反面、なんだか悔しくてね…」
「それは諦めていないからだよ?」
「え?」
「悔しいのはまだ諦められていないからだよ。彼はまだ美咲ちゃんの事スキって言ってんでしょ?」
「さぁ…どうだろ」
「前職はホストかぁ…」
そう呟くように菜緒は小さく言う。
「うん?何?」
「いや、なんか違う世界だなーと思って」
…違う世界。
それは私も感じてた。
「そうだね」
「なんか女絡みって言うのも納得しちゃうけど…」
「だよね…」
「私のホストのイメージって、とにかく女を抱くってイメージしかない。って、あ、ごめん。イメージだから気にしないで」
「そうだよねぇ…」
「あ、けど帰って来てからは上手くいってたんでしょ?美咲ちゃんの気持ちだけ押してもダメだよ。そんな事してたらこの5年間は無駄って事でしょ?」
「そう、…かな。まぁ、もう終わったからいいんだけどね」
「好きって言われてんだったら幸せにするって言われてんだったらその言葉信じなきゃダメだよ。疑ってたらキリがないしさ」
「…うん、そだね。で、もう私の事はいいからさ、菜緒はどうしたの?私に用事があったから呼んだんじゃないの?」
そう言った私に菜緒はハッと思い出したかのように食べていた手を止め、鞄の中からパンフレットを取り出す。
そのパンフレットには“オーストラリア”の文字。
懐かしい文字を見つめていると菜緒は1ページ目を捲って指差した。



