「えっ、菜緒って、あの菜緒?」
「もー!あの菜緒って、よく分んない言い方だけど、その菜緒だよ」
そう明るく笑い声で言ってくるのは留学中に一番仲良くなった、菜緒からだった。
「えっ!何で番号知ってんの?」
「ほら、美咲ちゃんが来た時に書いてもらった名簿。それ見て掛けたの」
「そーなんだ。ビックリした」
「あー…LINEしかしてなかったもんねぇ。って言うか、元気なの?」
「まぁ、一応…」
「なにー、その沈んだ声。あのさ、今日本に帰って来てるの!良かったらさ、今から会わない?」
「今から?」
「あ、何か予定あった?」
「いや、何もないけど…」
「だったらさー、昼食がてら会おうよ。えー…っと、桜橋駅だったら美咲ちゃんも近いよね?」
「うーん…30分くらい?」
「じゃ、同じだ。12時に待ってるから」
電話を切った後、久しぶりの弾けた声に気分が少し弾んでしまった。
相変わらず弾けた性格。
私の周りには全然居ない性格。
だからなのか、その異様に弾けた明るい声に親しくなってしまった。
この5年間、一番身近に居て何でも話しあえた菜緒。
同じ年なのに菜緒の明るさには私でさえ敵わない。
ダラダラしていた所為でもあって、身支度なんて何もしてなかった私は、慌ててメイクをして12時に間に合う様に家を飛び出した。



