零れ落ちた涙の所為で天井を見上げる視界が悪くなった。
暫くボンヤリとして、その涙を拭った私はバッグを手にしてマンションを出る。
一階の廊下に目にしたポストに鍵をコトンと落とすと、無償に切なくなってしまった。
もう戻ることのないマンション。
好きだけど、好きだけど別れを選択する事だってあるよね?
…ありがとう。って、そう伝えることはまだまだいっぱいあるの。
でも、これが私が選んだ道なの。
これであの女も平和でしょ?
これで私の前にも現われないから、やっぱしこの選択が正しいの。
正直、そう言うの面倒くさいから。
翔だって女に困ってないからいいハズだよ?
なのに、自分で決めた事なのに心が切ないのは何でなの?
自分が決めたことに悩むのは私の悪い癖。
昔っから変わってない性格は今でも同じ。
こんなムシャクシャする気持ちのまま向かえてしまった新たな年。
そんな寂しい年が始まった矢先の事だった――…



