「…別れたい」


ポツンと呟いた私の小さな声。

その声を聞きとったのか翔は深いため息を吐き捨て私の肩を軽く揺すった。


「お前さ、誰かに言われた?」

「言われてないよ。私がそう決めたの」

「勝手に決めんなよ。俺の気持ちは変わってねぇって言ったよな?」

「うん…」

「だったら美咲が俺に対する気持ちはそんなんだったわけ?」

「……」

「この5年すげぇ待ってた。なのにそんな簡単に終わりにすんのかよ」


“なぁ、美咲!!”


付け加えられた言葉と同時にグッと上に乗っかる翔に顎を掴まれる。

その拍子で逸らしてた目線が翔に向かい、表情を崩した顔が目に飛び込んだ。


「だったら翔は私に言う事ないの?」

「は?」

「知ってるよ、ホスト業界に誘われてるんだってね」

「あー…それか。関係ねぇよ」

「じゃあ!どうして結果を出さないの?私が居るから?」

「違ぇよ」

「じゃ、何でっ!?」


声を上げた瞬間、そっと翔の手が顎から離れて行く。

そのまま上から見下ろす翔は悲しそうな瞳で私の肩に顔を沈めた。