服が掛けてあったクローゼットを開け、そこから数枚掛けてあった服をハンガーから外しボストンバックに詰め込む。


別に嫌いになったとか別れたい訳じゃない。

ただ、私の居ることで翔の居場所を塞ぎ止めたくなかっただけ。


ホストに戻る決断の原因が、私であるのなら翔の思ってる事を最優先に考えさせてあげたかっただけ。

だって、私の夢は翔が叶えさせてくれたようなもん。

だから今度は翔の好きにしていいよ?


だから…


私から離れるよ。


ハンガーに掛けてあった服を全て入れ、タンスの中に入っている服を取り出して鞄に詰め込もうとした時。

不意に聞こえたドアの音でドクンと心臓が一気に飛び跳ねた感覚になってしまった。


…翔?


まさか今、帰って来るとは思わなかったから私の進めていた手が全く動かず、


「…美咲?」


不意に聞こえた翔の声で視線がゆっくりとそっちに向かった。


「…おか…えり」


休みだったんだろうか、私服姿の翔はドアの前で佇んで私をジッと見つめる。

その瞳が見てられなくて、私は少しずつ視線を下に下げた。