きっとこの気持ちが冷めるままに、この気持ちが曖昧にならないようにと自分の中で急いでたのかも知れない。
誰に相談する事もなく勝手に決めてしまった、私の答え。
このまま時間を置いちゃうと、今以上に躊躇ってしまうから急いでたんだと思う。
あの女に出会った3日後。
私は夕方の時間、久し振りに翔のマンションへと向かった。
ガチャ…と微かに響く鍵を開けた音。
居るか、居ないかなんて分かんないけど、とりあえず置いてあった荷物を全て持って帰ろうとそう思った。
開けた瞬間に広がるのは久々に見る風景と、翔がつけている香水の香り。
玄関に靴がない事で居ないと思った私はリビングに向かい、その光景に何だかやるせなくなってた。
テーブルの上にある灰皿からはタバコの灰が溢れそうで、ビールの缶、ウイスキーの瓶、ワインの瓶。
どんだけ飲んでんのか知らないけど、大量過ぎて言葉を失う。
…身体、大丈夫なの?
一瞬で過ったのは、その言葉。
結局、私は翔に対して何をしてきたんだろうか。
5年前はあまりにも無関心だったから考えたりもしなかったけど、今じゃこれが一番の悩みになってたのかも知れない。
ただ好きになって迷惑掛けて、振りまわしてきただけ?
あの女が言うのも分かる気がするけど、それをあの女に言われる事自体、気に入らなかった。
そうあってるから。
そう…あってるから、言われたくなかった。
…ごめんね、翔。



