「用件はなんですか?」

「そんなの決まってるでしょ?楓の事」

「……」

「ってかさ、どうしてアンタなのか分らない。アンタが楓に何吹き込んだかは知らないけど、ホストには戻るつもりないってさ」

「……」

「でも正直、楓は悩んでるわよ?今、業界に誘われてるらしいじゃん」

「……」


業界に誘われてる?

…それって、もちろんホストだよね。


やっぱ、葵の言ってた通りだった。


「けど戻るつもりはないと言った楓が全然結果を出さないの。それは悩んでるって事でしょ?」

「……」

「その悩みって、きっとアンタだと思うんだよね。いい加減、楓を振りまわすの辞めたら?」

「私…が?」


女の言葉に思わずプチンときた。

私が翔を振りまわしてる?

そうだとしても、あんただけには言われたくない。


「そう。アンタじゃなかったら他に居ないでしょ?アンタが居るから楓迷ってんじゃん」

「って言うか、私関係ないですよね?決めるか決めないかは本人ですよね?」

「だからその楓がなかなか決めないって言ってんの!分ってんの、アンタ?」

「……」

「私が居るから今の楓がいんだよ!病院にだって来ないし、楓に何もしてないのはアンタじゃん!」

「……」

「じゃあ教えてよ。アンタは楓に何をしてきたって言うの?ただ楓を縛りつけてるだけじゃん」

「……」


それを言われてしまえば何も返す言葉がない。


「私、楓が好きなの。あんたよりは確実に楓を幸せにできる」

「じゃ、どうしたらいいんですか?」

「別れて」

「じゃ、もう私の前に現われないで下さい」

「当たり前でしょ!」


フンっとそっぽを向く女を睨んだ後、私は背を向けて足を進めた。