「…ねぇ、翔?」

「うん?」


翔に目線を向けると、短くなったタバコを地面に押し潰してた。

完全に火が消えると、翔は私に視線を送る。


「後悔してないの?」

「え?」

「ホスト…辞めた事に後悔してない?」

「何で?」


そう言った翔の声は低く小さかった。


「なんて言うか…私が帰ってくるから辞めたって言うんだったら――…」

「踏ん切りがついたから」

「……」


私の声を遮って翔は空を見上げて息を深く吐いた。


「言わなかったっけ?俺…いつかは辞めたいって言ってたの覚えてねぇの?」

「…覚えてるけど」

「美咲の為にとか、美咲が帰って来るから辞めた。とか、そー言うんじゃねぇから」

「……」

「ただ自分の中で辞める決断がついたから。もう俺もいい歳だし、そこまで騒げねぇって事」

「……」


フッと笑った翔はボンヤリと見つめている私の頭をクシャっと撫でた。


「分かった?」

「…うん」


5年も経った環境の所為だろうか、それとも私が年を重ねた所為なのだろうか。

昔とは思う事とか考え方が違う。


ほんとに辞めて良かったんだろうかって何故か思ってしまう。

でも、だからと言ってずっと日本に居てたら“辞めて”って何度も言ってるような気がした。