「何?美咲ちゃん。学校の事なら今は聞かねぇけど」

「そ、そうじゃないの!!天野さんが居ないの!」

「は?」

「だから天野さんが居ないのって!」

「居ないって?」

「今、帰って来たら家に居なかったの。電話しても電源切ってるのか繋がんないし!家にでも帰ったのかな?」

「それはねぇと思う。とりあえず探すからまた電話――…」

「あたしも探すから!!」


そう言って、急いで階段を駆け下り玄関に置いている鍵を握った時、


「美咲ちゃんが家出てどーすんだよ。家におれよ。もし帰って来たらどーすんだよ」


一条くんの落ち着いた声にハッとした。


「あぁ、そっか」

「とにかく居て。何かあったら電話すっから」

「分った」


一条くんと電話を切った後、握っていた鍵をもう一度置き、あたしはリビングのソファーで膝を抱えた。

そのまま何度も天野さんに電話をしたけど繋がる事はなく刻々と時間が過ぎる。


時間が過ぎていくたびに携帯が気になり何度も何度も画面を見てしまう。


なのに1時間たっても何も音が鳴る事はなかった。


そしてそれからまた1時間が過ぎようとした午前2時。

ソファーに横たわって、目を閉じていたあたしの目が着信音によって勢いよく見開いた。