暫くしてバタン…と言うドアの音で身体が飛び跳ねてしまった。
手にもっているソレをギュっと握りしめて、残りの散らばったゴミをゴミ箱に入れ直す。
と、同時にリビングのドアが開き、そこに立っている天野さんを私はジッと見つめた。
「…天野さん、ちょっといい?」
そう言った私の声に天野さんの肩がピクっと動く。
避ける様に目を逸らす天野さんの元へと近づいた私は、手の平にあるソレをそっと見せた。
隠すつもりは全くない。
これは先生だから言ってるんじゃなくて、天野さんの為に。
「…これ、飲んだ?」
そう言った私に天野さんはチラっと視線を向けるとすぐに逸らす。
その目が余りのも泳いでてバレてしまったと言う事を実感させる。
…やっぱ、そうなんだ。
思わず出たしまったため息に、私はそのゴミをギュっと握りしめた。
「ホントはこう言うの言いたくないけど、これ飲んだって事は――…」
「言わないで下さい。…誰にも言わないで下さい」
視線を逸らしたまま遮って天野さんが言った言葉と同時に、天野さんの目尻から涙が頬を伝う。
「天野さん?」
「お願い、センセー…奏斗にも誰にも言わないで」
唇を震わせ目から次々と落ちて行く涙を見た瞬間、私はギュっと天野さんの身体を抱きかかえた。
天野さんの涙を見た瞬間、頼る人が誰も居ないんだね。ってそう思ってしまった。
孤独で寂しくて一人で悩んで、…そんな姿が過去の自分と重なって、どうしようもないくらいに胸が苦しくなってた。
だからそんな天野さんの震えた身体を壊れそうなくらい抱きしめた。



