暫く何も考えないようにと瞑っていた目をゆっくりと開け、ソファーに座り直す。
頭を擦って、立ち上がろうとした瞬間、足元にあったゴミ箱がコロン…と小さな音を立てて倒れた。
その中に入っていたゴミが飛び散り、ため息をつきながら手を伸ばしたその手が、ピタっと止まる。
…薬。
飲んだであろうその薬のゴミに私は首を捻る。
飲んだ記憶すらないその薬に頭を悩ませ、何気に取って見つめたその薬のゴミに激しく心臓が波打った。
「…なに、これ」
手の平にあるそれは風邪薬でも頭痛薬でもない。
そこらへんでよく見る薬じゃないそれは、
…――ピル、だった。
だから思わず風呂場の方に視線を無意識のうちに送ってた。
だって、これを飲むのって今、まさに居る天野さんしか居ないじゃん。
こんなの飲むのって、天野さんしか居ない。
ちょっと、その手が震えてしまった。
頭を駆け巡っていく、諒ちゃんの言葉。
“なんか変な予感がすんだよ”
そう言ってた諒ちゃんの言葉がやけに頭から離れずにいた。



