「でも、その暇を潰してごめん」
「別に。俺はただ翔さんの事を伝えに来ただけ」
そう言った諒ちゃんから私は視線をゆっくり落とす。
「…うん」
それ以上諒ちゃんは翔の事に口を開かなかったけど、まだ何かを言いたそうにしていたのだけは何となく分かった。
「ありがとう、遅くまで。…じゃ、また」
続けてそう言った私は諒ちゃんに背を向けて玄関のドアを開けようと瞬間、
「美咲?」
その声で手が止まった。
「何?」
振り返る私の先に居る諒ちゃんの視線は家に向かっている。
「あの子の事、ちゃんとしろよ。傍にいるお前がちゃんと聞けよ。なんかあったら助けるから」
「……」
「じゃねぇと、変な予感すんだよ」
「…よ、かん?」
「つっても俺の勘」
「……」
「って言うか、お前と似てんだよ、昔の美咲と」
“じゃあ、またな”
付け加えるようにそう言った諒ちゃんはスッと背中を向けて車に乗り込み発進させた。
その諒ちゃんの車のテールランプを私はボンヤリと見つめてた。



