「あー…。こ、この人はなんでもない人だから」
私とどう言う関係?…な的に見えたその表情に、私は天野さんに手をブンブンと振る。
「つか、もっとまともな言い方があんだろうが」
素早くそう言った諒ちゃんは顰めた顔を更に顰める。
「あー…、うん。友達の旦那。怪しい人じゃないから」
そう言った私に天野さんは更に“何で友達の旦那?”とでも言いたそうな視線を送ってくる。
「お前が言うと余計に怪しいわ」
ボソリと呟く諒ちゃんに一息吐き、私は天野さんを見つめた。
「ねぇ天野さん、何があったの?」
追求する私に天野さんの口元が少しだけ震えた。
そして、身体も少し震わせる。
「…乗れよ」
そう言った諒ちゃんは車に近づきドアを開ける。
その車内から取り出したジャージの上着を天野さんの肩にそっと掛けた。
諒ちゃんの行動。
怖いのに、ちょっとした優しさが利く男だなーって思うのは昔っから変わってない。
寒さの夜空。
そっと天野さんの身体を抱え込み、私は一緒に後部座席へと座った。



