「アンタ、もしかして――…」
「ちょっと、諒ちゃん!」
その言いかけた言葉をつい止めてしまった。
その後の言葉を聞きたくはなかった。
何か嫌な予感と嫌な汗が込み上げてきたから。
天野さんの訳の分からない、顔の痣と多少の傷。
それに少し汚れて乱れてる制服。
…待って、天野さん。
もしかして――…
「あ?…んだよ、」
諒ちゃんの低い声と冷たい目付きが私に降り注ぐ。
「諒ちゃん、ちょっと落ち着こう」
「は?」
「あのさ諒ちゃんさ、いい歳だしさ、こう言うのには係わっちゃいけないよ」
「はぁ!?」
だって、何するか分んないもん。
「だ、だから…私が何とかするから」
「お前に何が出来んの?」
「出来るよ。だって先生だもん」
「は?そんな時だけセンコーずらすんなよな」
「お願い、諒ちゃんは関わんないで」
「でもよ、」
「だ、大丈夫」
「どうみても大丈夫じゃねぇだろうが」
そう天野さんの隣で繰り広げる会話に、天野さんが俯いていた顔をゆっくりと上げる。
そして今までまともに見てなかった諒ちゃんの顔を見てすぐ、戸惑う様に私に視線を向けた。
…あぁ、そっか。



