「誰にやられた?」
そう諒ちゃんが吐き出したのは冷たくて低い声。
「ちょ、諒ちゃん!倒れてたって…」
「あ?何かがあったから倒れてたんだろうが」
「そう、だけど…」
「なぁ、アンタさ。誰にそれ殴られた?」
その言葉に私は咄嗟に天野さんを見てた。
…殴られた?
天野さん、殴られたの?
でも、考えればそんな痣って殴られた痣なのかもって思ったりもした。
殴られた事なんて一度もないから私には分んないけど、諒ちゃんがそう言うんだからそうに違いない。
俯く天野さんは全く口を開く気配はなく少しだけ唇を噛みしめてた。
だから。
「ねぇ、天野さん…」
そう言って少し天野さんの方に触れた瞬間、微かに震えた気が…した。
そんな天野さんに諒ちゃんは更に距離を縮め、天野さんの顔を覗き込む。
「言いたくねぇのは分るけど、アンタをそうしたの男だろ?」
「…お、男?」
思わず諒ちゃんの言葉に私が呟いてた。
…男。
…そう、なの?



