車を1時間くらい走らせて着いた場所は高層階にあるイタリアンだった。

ガラス張りで夜景が一望できる室内。


なにここ。

綺麗すぎるでしょ。

それだけで癒される。


ご飯を食べながら会えなかった5年ぶんの話を盛りだくさんした。


「どっか行くの?」


食べ終えた後、車に乗り込んだ私は翔に視線を移す。

咥えたタバコに火を点けた翔は、


「内緒」


そう言って一息吐く。


「内緒?」

「そう、内緒」

「何で?」

「なんでも…」


タバコを咥えたまま口角を上げた翔は車の窓を開け、発進させた。

内緒って言われると、どうしても聞きだしたくなる。

だけど、それを聞かずに私はただただ暗くなった外を窓から見てた。


全然分かんない道のり。

でも時間が経つごとに徐々に分かりだした道のりにハッとした。


…多分、ここって。


「…海」


見えだしてきた広い海を見てそう呟く。

…懐かしい場所。

思いだがいっぱい詰まった場所。

5年ぶりのこの場所。


「帰ってきたら絶対初めに行くって決めてた。もう一回、美咲と来たかったから」


そう言った翔に心が揺れた。