「翔さんが入院してるって知ったのは丁度、香恋が産まれた一カ月後だった」
何を思ったのか、諒ちゃんは昔話のように今までの経緯を話しだした。
でも、その諒ちゃんの言葉に口を開く事なく私は耳を傾ける。
「初めは空いてる時間を見つけては香恋を見に来てくれてたけど、その一カ月後から姿さえ見せなくなって電話しても出てくんねぇから直感で何かあったと思った」
「……」
「何回掛けても繋がんねぇから幼馴染にホストしてる奴が居て、その人に聞いたら入院してるって言われた」
「……」
…ホストしてる諒ちゃんの幼馴染。
たしかそれって、流星さんだ。
5年前、翔を巡って初めて店に訪れた時に出会った人。
翔が諒ちゃんを知ってたのもその人繋がりだったから。
「んで、行ったら既に入院一か月経ってて、けど翔さんが“ぜってぇ美咲には言うな”って」
「……」
「言ったらマジでお前許さねぇよ。って言われてさ、正直別に俺がどうなろうがそん時は関係なかった。翔さんにそう言われても、俺はお前に言うべきだと、そう…思ってた」
「……」
「けど実際考えてみれば、悩んだ挙句行ったお前を引きもどす事さえ出来なくて。…悪いと思ってる。翔さんに口止めとか、そんな事関係なくお前に言うべきだった」
「……」
「翔さんにどう言われたかは知らねぇけど、悪いのは、俺だから」
「……」
諒ちゃんの吸っていなかったタバコがジリジリと焼け焦げ、先端に灰をつくる。
その灰をボンヤリと見てると、その手元にあった灰皿で諒ちゃんはため息をつきながら落としてた。
「だからさ、帰れよ」
そう言われた言葉になんとなくシックリとはこなかった。



