「つか何?葵になんか言われた訳?それとも翔?」
ついカッとなっていた私は止めていた手を再び動かした。
「なんも言われてねぇよ、どっちからも。そもそもお前の話すらしてねぇよ。もう、そう言った事話す年齢でもねぇしよ」
「じゃあ、何で来たの?」
「お前の事が心配になっただけ」
諒ちゃんの表情は見てないけど、カチッと微かに響いた音がライターだとすぐに分った。
「心配って…それこそ心配される年齢でもないけど」
「そうじゃなくてよ、あの日から会ってなかったから気になってんの。そもそも俺が悪いし」
あの日。
その意味を示すのは、私が散々諒ちゃんに怒りをぶつけた日の事。
その挙句、言いたい放題言った私はそのまま帰った。
あの日から諒ちゃんとは会ってなくて、…だから正直、今話すのも気まずい。
それでもと思って、2つのマグカップに珈琲を注いだ私は諒ちゃんが居るテーブルへと向かう。
スッと姿を現せた私を諒ちゃんはタバコを咥えたままチラっと私に視線を移した。
そしてもう一度逸らす。
持っていたマグカップをテーブルに置いた私は、諒ちゃんの前に腰を下ろして、マグカップに入ってる珈琲をボンヤリと見つめてた。



