続いて入って来た諒ちゃんは、私に話す事なくそのまま居間に向かう。
その姿を目で追っていると、諒ちゃんはママの遺影の前に腰を下ろした。
自分のポケットから取り出したライターを取り出した後、線香に火を点ける。
その姿を見た瞬間、私はスッと諒ちゃんから視界を外した。
…ありがとう。
そう、そっと心の中で呟く。
だけど今、目の前に諒ちゃんが居る事に私的にはシックリこない。
「…お前さ、」
少し間を置いての諒ちゃんの小さな呟きに反応した私は俯いていた顔をゆっくり上げる。
近づいてきた諒ちゃんは一息吐いてから、そのまま椅子に腰を下ろした。
「お前、何で帰んねぇの?」
「は?帰って来てるじゃん」
素っ気なくそう言った私はカウンターキッチンへと向かいマグカップを棚から取り出す。
そうしたのも諒ちゃんの顔を見たくないからであって、私は時間を稼ぐ為、手を止めた。
「つか、ここにじゃねぇって。あっちだろうが」
もちろん、そう言われる事も分ってた。
分ってるから、聞きたくない話。
「何であっちな訳?私の家、ここじゃん」
「そうだけどよ、何でここな訳だっつってんの」
「別にいいじゃん。翔と同棲してる訳でもないし、諒ちゃんには関係ないし」
「あぁ。そうだな。俺には関係ねぇよ」
そう言い放った諒ちゃんの言葉に少しイラっとくる。



