インターホンが鳴ったのは朝の9時を回ったところ。

玄関のドアを開ける先に見えたのは微笑んだ葵の姿。


「美咲、おはよ」

「…おはよ」

「ごめんね、朝早くから」

「ううん。…入って」


私はドアを大きく開け、葵を中に通す。


「あ、これバームクーヘンなんだけど、あげる」

「ありがとう。別によかったのに…」

「いいの、いいの」


テーブルに置いた葵はニコっと笑って椅子に腰を下ろした。


「じゃあ今、食べていい?まだ何も食べてないから」

「うん、いいよ」

「葵は?」

「私はいいや」

「そう…。ところで香恋ちゃんは?」


紙袋に入ってる箱入りのバームクーヘンを取り出し私はキッチンへと向かう。

見てもらってる
「今日は私のママに見てもらってる」

「そーなんだ…」


バームクーヘンを適当な大きさに切り、温かいレモンティーを注ぎ、それをテーブルへと運ぶ。

そして座ってすぐに私は葵の顔を見た。


その視線に気づいた葵は何だか言いにくそうに私を見る。