「おー、里桜香…」
一条くんに背を向けた私の耳に一条くんの声が入りこむ。
咄嗟に振り返った先には天野さんが来たばかりだった。
「おはよ」
「おはようございます」
声を掛ける私に天野さんはやる気のなさそうに挨拶をし、私の前を過ぎ去る。
そんな天野さんを見てから不意に視線が合った一条くんに苦笑いをした。
「おーい、里桜香!お前、最近冷てぇぞ」
一条くんは駆け足で天野さんに駆け寄り背中を叩く。
「もー!痛いってば!!」
「つか何怒ってんの、お前」
「うっさい!奏斗に関係ないじゃん!!」
「可愛くねぇな、お前…」
「別にいい」
不機嫌な天野さん。
そんな天野さんと一条くんの会話に何だか思い出したように私の顔から笑みが零れた。
懐かしいな。
あんな事もあったっけ、…諒ちゃんと。
ふと思い出したその名前。
あれから何の連絡とかもないけど、葵が会おうと言った限り諒ちゃんの事も少しは絡んでるとしか思えない。
あんまり話しなんて聞きたくないけど…
そんな事を思いながら私は次の日、葵を待った。



