寒い夜空の下、私はタクシーを拾って家まで帰った。

今では誰も居ないこの家。


正直、それだけで悲しくなる。


その日は寝つくことすら出来なくてカナリの時間ベッドの中で過ごしてしまった。

ベッドから床に無雑作に置かれているスマホを掴み画面を見つめる。


…12:28。

あまり寝てない所為か頭が痛む。

そしてふと目についた不在のマークとLINEに視線が止まった。


「…葵?」


着信もLINEも葵からで、画面には“時間があったら会いたい”そう書かれていた。


8時と9時に着信が入ってる。

なんとなく会う理由がわかりつつも、私は一息吐き葵にコールする。


「…美咲?」


電話の声から沈んだ葵の声が聞こえる。

その遠くのほうで何かお喋りをしている可愛い香恋ちゃんの声が聞こえる。


「うん。…ごめん、寝てた」

「あー…うん」

「どうしたの?」

「会って話したいんだけど、時間ある日ある?」

「明日の午前中ならいいよ」

「分かった」

「美咲…今、家に居るの?」

「うん」

「じゃあ行ってもいい?」

「いいよ」

「じゃ明日行くから」


電話を切った後、また私は布団を頭まで被り目を閉じた。