「つか、こんな所でビール飲んだ事ねぇよ」
「私も」
「寒くねぇの?」
「寒かったけど飲んだら温かくなった」
「へぇー…。で、どした?何かあった?」
そう言った一条くんは私の顔を覗き込んだ。
「…ただ面倒くさくなっただけ」
「なにが?」
小さくそう言った私は手すりに両手を置き、ずっと遠くに走る車を眺めた。
いつか天野さんが言ってた。
何もかもめんどくさくなったって。
今ならそれが分かるような気がした。
でも、頑張ろうって私は天野さんに言ったけど、実際自分がそう言う状況にあった時、頑張れないような気がした。
嫌と思えば何もかも嫌になる。
天野さんは頑張ってんのに、私は頑張れない。
「何もかも全部。考えるのも学校も教師も恋愛も生きるのも全て」
「何それ。センセーが言っちゃいけねぇ事ばっかじゃん」
「でも今は違うから」
「今は違っててもセンセーには変わりないだろ」
「もう教師辞めたい」
「何で?」
「向いてないから。人前に立つ事自体向いてないし教えるのも面倒」
「なんかすげぇ発言してんね」
「だって…本当にそうだもん」
フーッと深く息を吐き捨て私は空を見上げる。
ここから見る空は真っ暗で星なんて一つも見えない。
まるで私の心と同じ。



