鳴り続けるスマホを鞄の中から取り出し画面を見つめる。
…一条奏斗。
「あー…美咲ちゃん?」
耳に当てた瞬間、明るい声が聞こえる。
「うん」
「ごめん、遅くに電話して」
「ううん」
「あのさ、補習のプリント持って来いって言ったじゃん?まだやってねぇっつーか、持って帰んの忘れた。だからさ明日学校で――…」
「来て…一条くん」
「え?何?」
「お願い、来て」
「来てって何処にいんの?外?」
「うん。歩道橋の上」
「は?何時だと思ってんの?」
「さぁ…待ってるから」
一方的にプツンと切った電話。
むやみにチューハイをゴクゴクと飲むと、何だか身体が温かくなって丁度いい体温になってた。
寒い夜は心寂しいの。
そうさせたのは自分だって分かってんのに。
真っ直ぐの道に向かって進んでいく車のテールランプを見ながら私はボンヤリと眺めた。
お酒を飲んで頭の中を真っ白と言うか、真っ黒にしたい。
白は染まるから。
余計なものはいれたくない。
だったら真っ黒にして何も染まらないようにと目を閉じていたい。



