「ホストを辞めた理由って何?」


思い出しただけで薄らと溜まっていた涙が右目の目尻から垂れ落ち、頬を伝った。


「言っただろ。辞める決心がついたからって」

「じゃあ、その中に私は入ってた?」

「え?」

「辞めた理由の中に私は入ってたかって!」

「お前の所為で辞めたとか言ってねぇだろ。年齢も年齢だしって、言わなかったか?」


ボンヤリと見つめる翔の視線が少しづつ私に向けられる。

頬に伝った涙を手で拭って、心を落ち着かせようと一息吐く。

そして溜めこんでた気持ちのままに口を開いた。


「翔を返せって言われた!!翔が辞めたのは私の存在だって言われた!!そんな事言われたら私の居る意味がなにもないじゃん!!」


声を上げた私に、翔は私から目を逸らそうともしなかった。

その瞬間、また新たな涙が頬を伝う。


少しづつボヤけていく翔の顔。

その翔から視線をスッと逸らすと、立ち上がった翔の姿が視界に入った。


「ちょっと、出るわ」

「待ってよ!どこ行くの?」


私の横を通り過ぎた翔の腕を強く掴む。


「すぐ戻るから」

「何でよっ!なんで今、あの女の所に行こうとする訳?」


何も女の所とは言われてないけど、会話の流れからしてそこしかない。


「俺が納得出来ねぇから」

「だからと言って会わないでよ!!」

「会わねぇと話し進まねぇじゃん」

「何でよっ!!だからと言って何で簡単に会うの!?昔ならともかく、何で辞めた今でも簡単に会っちゃうの?そんな今でも翔は色んな人と会ってんの?」


翔の行動なんて把握してない。

当時のホストの翔は色んな人に会ってた。


それくらい分かる。

でも今は違うでしょ?