「そーじゃないって?」
「半年間もの間、誰に看病してもらってたの?誰に見てもらっていたの」
そう言った私から一瞬にして翔の視線が私から逸れる。
やっぱ、そーなんじゃん。
やっぱ、あの女なんじゃん。
何であの女?
ねぇ、なんで?
「そいつから聞いたのか?」
ため息を付きたそうな表情。
そして少し苛々した気持ちを掻き消そうとするように、翔はタバコの箱に手を伸ばし口に咥えたタバコに火を点けた。
「そう」
「アイツはただの客」
「客じゃないでしょ?ただの客だったら半年も看病しないでしょ」
「俺はそうしてくれとは頼んでねぇよ。でも、当時のあん時は大切な一人だったから」
「どう言う意味で?」
「え?」
「だからどう言う意味で大切かって聞いてんの。…友達?…恋愛?」
「どっちでもない。大切な客の一人。けどソイツとは何もねぇから」
「何もなくはないでしょ?」
「…はい?どういう意味?」
「半年間も看病してもらって、何もなくないでしょ?」
「なんもねぇって。…俺の事、信じられねぇのかよ…」
そう言った翔は灰皿に打ち付けるタバコをジッと見てた。
何もないって信じたいけど、今は何が本当かさえわからない。
「…私は必要なかったの?」
私はいらなかった?
もう2年前にもなるけど、その時の翔には私は要らなかったの?
「必要だったよ。だからこそ言えなかった」
「どうして?」
「あのままこっちに引き戻してたら後悔するから」
「私はしなかったよ」
「違う。俺が後悔する。俺の所為で途中で辞めたんだって、ずっと後悔すっから。だから自分の中でずっと抑えてた」
そう言った翔は思い出すかのように俯いてタバコを咥えた。



