「またって、英語は初めてだけど」
「英語は初めてだけど、他のんありすぎ」
「それは仕方ないじゃん。サボってんのが悪いんでしょ?」
「はいはい」
面倒くさそうに呟いた一条くんはタバコを咥えたまま、二枚のプリントをマジマジと見る。
「しててね」
「あー…うん」
「で、…これ」
スカートのポケットに手を突っ込んだ私は、そこから銀色に光った鍵を取り出す。
差し出した鍵を見た一条くんは、「あぁ…」と言って受け取とりポケットに収めた。
「…ありがとう」
「今日はどうすんの?帰んの?」
「あー…うん」
「なに、その微妙な返事」
クスクス笑った一条くんはタバコの煙はフ―っと吐き出す。
「…奏斗?」
そんな空気の中、聞こえた明るめの声に私と一条くんはスッと視線を向けた。
まだ10代か一条くんと同じ年か分かんないけど、見た目はそんな感じの女の子。
「どした?」
そう言った一条くんに「じゃ、」とだけ小さく呟きその場を抜ける。
「なーんか、奏斗ってさ、新山先生と仲良くない?」
「そうか?」
「なんか怪しー…」
「何もねぇよ。ただ補習のプリント貰っただけ」
「へぇー…そうなんだ。ところでさ、今日空いてる?」
背後から聞こえた会話に思わずため息が零れる。
そうだよね。
私これでも先生なんだよ。
たかが4つだけの年の差だけど、私、一応先生なんだよ。
こうやって話してたら誤解されそうになるのも無理ないか…



