「汚ねぇけど、適当に座って」


結局ついた場所は一条くんのマンション。

テーブルと床に無雑作に置かれているファッション雑誌に車、そして美容関係の本。

それを掻き集めた一条くんはソファーの隅のほうに重ねる。


…なんで私、一条くんちに居るんだろう。


床に腰を下ろした私はテーブルにある灰皿から埋もれそうになっているタバコの吸い殻をみながらふと、そう思った。

そもそも一条くん、今日学校来てなかったじゃん。


もう…英語の単位もないよ?


「何か飲む?」


俯いて首を振る私の視界に一条くんの顔が現われる。

しゃがんで覗き込んでくる一条くんの瞳と合わせないようにと更に俯いた。

あまり今の表情は見られたくない。


「つかさ、彼氏と喧嘩でもした?じゃなかったら帰りたくないなんて言わねぇだろ?」


カチッと秘かに音が聞こえた後、タバコの匂いが広がる。

ため息交じりに吐き出された言葉が、なんだかもどかしくて切なかった。


あの女に言われた通り、私は翔に相応しくないんだって。

考えれば本当にそうなんだって言う思いが強く込み上げる。


私にとって翔は何?

翔にとって私は何?


もう考えるのも面倒くさい。