スッと離れた身体。
気づけばいつの間にか助手席に座ってた。
さっきよりも雨が凄くて目の前のフロントガラスを打ち付ける。
「…どこに送ればいい?」
窓の外をボンヤリと見つめる私の耳に一条くんの声が聞こえる。
帰る所はないの。
って言うか帰りたくないだけ。
「おーい、聞いてる?…美咲ちゃん?」
続けて聞こえる一条くんの声。
別に困らせてるわけじゃないんだけど…
ないんだけど…
「帰りたくないの」
気づけば勝手に私の口はそう動いてた。
「帰りたくないって、何かあった?」
「……」
「美咲ちゃん…」
「……」
「答えねぇんだったら俺んち行くよ?」
正直、声をだすのも面倒だった。
深くため息を吐き捨てた一条くんに“ごめん”って言う3文字が言えなくて、これじゃあ、どっちが先生なんだか分かんない。
先生なんてのは、ただの響だけ。



