「傘ねぇし送るから」
「……」
「つか聞いてんの?…美咲ちゃん?」
「……」
俯く私の顔を覗き込むように一条くんの顔が見える。
でも、だけどその一条くんの顔はボヤケてた。
瞳が潤んでる所為で、はっきりと一条くんの顔が分かんない。
思い出すと悔しくて悔しくてたまらなかった。
「…もしかして泣いてる?」
「…ごめん。なんでもないから」
「何でもなかったら泣いたりしねぇよ。雨降ってるし風邪引くよ」
そう優しく言った一条くんの身体が私を包み込んだ。
まるでこの雨を遮る様に気づけば一条くんの身体に覆われてた。
寒い雨の夜空の下。
一条くんの温もりの所為か、寒さなんて何も感じなかった。
「…センセ、帰ろ?」
ギュッと抱きしめてくる一条くんがポツリと呟く。
こんな時に、センセ…って言わないでよ。
今は、美咲ちゃんのほうがよっぽどマシ。



