馬鹿みたいにほっつき歩いてしまった。
その所為か鞄の中から鳴り続けるスマホの振動音。
でも相手が誰だか見当がつくから出る気すらなかった。
時間が刻々と過ぎて行く内に目尻から熱い何かが込み上げる。
それと同時に額に落ちてきた雨粒。
まるで今から流す涙を誤魔化すかのように降ってきた雨に心寂しくなった。
ポツポツと降ってくる冷たい雨。
その雨が目尻から落ちて来た涙と重なって頬を伝った。
帰る宛てがないってこー言う事を言うんだって、改めて実感した。
自分の家に帰ろうかとも思った。
でも、そこじゃダメって…
今の私じゃ泣く事しか出来ないから。
あの家に居ると涙が止まんないから。
もし、5年前の私ならどうしてたんだろ…
「…美咲ちゃん」
不意に聞こえた私の名前を呼ぶ声。
頬に伝う涙を指で拭い視線を向ける。
私の横に寸止めされた真っ白の車の窓から顔をだす一条くんの姿が目に入る。
「何してんの?」
「……」
「学校終わってからこんな時間に寄り道?」
「……」
「もう終電ねぇよ?」
「……」
「つか、雨降ってっけど」
「……」
空を見上げた一条くんは顔を顰める。
「ねぇ、みーさーきーちゃん?」
突っ立っている私の名前を呼んだ一条君は頬を緩めた。
「…今日は車なんだね」
ポツリと小さく呟く私に一条くんは逸らそうとしていた視線を再び私に向けた。
「あー…だって寒いじゃん」
「そっか」
「ねぇ、風邪引くよ」
「……」
「…美咲ちゃん」
「……」
「何かあった?つか、雨降ってるって!」
「……」
「あーっ、もう!!」
声を上げた一条くんは車から降り、パーカーを私の頭に被せた。



