本格的に近づく冬の寒さは悴むくらいに手は冷たく日が落ちていくのも凄く早くて、冷たい空気がよりいっそうに身体を麻痺してた。
とくに何も変わらない日々の毎日を送り、日本に帰ってきて4カ月。
…12月半ば。
学校と言う職場にも慣れ、この毎日の環境にも慣れて来た。
仕事が終わった帰り道。
いつもより少し早い帰宅に、私は急いで足を進ませる。
電車に乗って最寄り駅で降り、マンションに向かおうとする時だった。
「…ちょっと、」
スッと現われた見知らぬ女の顔。
黒の二ーハイブーツを履き真っ赤なロングコートを着たキツメな顔の女。
まるでその風貌は夜の仕事をしてます。って感じの女。
その呼び止められた声は私に向けられたものだって、すぐに分かった。
だって、こんなふうに私の目の前で立たれちゃ、私しか居ない。
「何か?」
素っ気なく返す私に、女の眉がグッと寄ったのが分かる。
「アンタの所為じゃん!!」
「…は?」
いきなり声を上げて言われた言葉に私はすぐさま声を漏らす。
この状況が把握出来ない私の前に立つ女は更に眉間に皺がグッと寄る。
「返してよ、楓を!!」
一瞬、頭が思う様に動かなかった。
聞きなれないその名前。
誰の事を言ってんのか全く理解が出来なかった時、
「アンタの所為じゃん!楓が辞めてったの、アンタの所為じゃん!!」
続けて声を上げられた言葉にハッと我に返ったかのように意識が戻った。



