考えるよりも先に足が向かってた。
この写真の意味がしりたくて、持ってた意味を知りたくて…
でも聞こうとするママはもうこの世には居ない。
こんな写真、なんで持ってんのかも分かんなくて、私はもう一度美術館に足を踏み入れた。
「あの、すみません!」
さっきの女の人の前まで来て、私は少し声を上げる。
未だに作業を続けている女の人は不思議そうに私を見上げ立ち上がった。
「どうしましたか?」
「あのっ、お願いがあるんです」
「はい」
「岩崎さんの住所教えてほしいんですが」
「住所?」
「はい」
「いや、それは個人情報なのでちょっと…」
「そこを何とかお願いします。聞きたい事があるんです。会って、話したい事があるんです。それを伝えなきゃダメなんです。…お願いします」
困った表情をする女の人に頭を深く下げて数分。
トントンと触れられた方に視線が動く。
「辞める時に聞いたので教えますね」
「ほっ、ホントですか!?」
勢いよく頭を上げる私に女の人は柔らかく笑みを作る。
「そんなに頭下げられちゃね。それに岩崎さんと深い関係があるみたいだし特別に」
「すみません。有り難うございます」
岩崎さんの住所を書いた紙を受け取った私は美術館を後にする。
でも、その紙を眺めながら思わずため息が零れ落ちた。
ここからじゃ遠い遠い街。
電車じゃ到底無理。ましてや知らない街。
でもどうしてもどうしても会いたかった私は翔に全てを話し、次の日曜日その街まで連れて行ってもらった。



