「だから言ったろ?俺を頼れって」
翔が新たに点けたタバコの火が小さく音を奏でる。
口に咥えた姿をボンヤリと見てると、翔は再び口を動かした。
「辛かったら俺を頼れって。これ5年前も言った」
「そう…だっけ?」
「抱え込むところは全然変わってねぇよな」
そう言って苦笑い気味で笑う翔。
「分かんないけど…」
「辛いから逃げるんじゃねぇの。逃げるから辛くなんの。…この先の可能性を信じなきゃ何も始まんねぇよ」
「……」
「言ったろ?美咲の傍にずっと居るって。5年前からその気持ちは何も変わってねぇよ」
「……」
「ほら、美咲のお母さんが言ってた言葉。幸せになる一番の方法は“今”を幸せだと思う事って。…俺の今は今だから」
そっと抱え込まれた身体。
クシャっと頭を撫でられた瞬間、自棄に温かさが伝わった。
「…あたしも幸せだよ」
「なら深く考えなくてもいいんじゃね?」
微笑んだ翔の存在がとても大きく感じた瞬間だった。
やっぱ、あの頃と何もかわってない翔の存在が好きだった。