「別にー…奏斗には秘密だもん」
「あっそ」
笑いながらフイってする天野さんに、一条くんはフッと鼻で笑う。
「つか奏斗、珍しく来てるじゃん」
「そんな珍しくもねぇけど…っつーか、お前が来てねぇんだろ」
「あはは。そっか」
「あはは…じゃねぇし」
そうやって笑ってる二人にハッとした。
「って言うか、一条くんプリントした?」
「プリント?」
「国語の」
「あー…さっきした」
「さっき?」
「あ…」
「さっきって、私の授業だったよね?」
「ですね」
「なのに国語のプリントをしてたのですか?」
「忘れてたんで」
「忘れてたんで…じゃないでしょ?私の授業聞いてないでしょ?」
「大丈夫。耳に入ってるから」
何も思ってないかのように口角を上げる一条くんに思わずため息が漏れる。
そんな呆れたため息を吐き出す私に隣に居る天野さんはクスクスと笑みを漏らした。
「一条くん、今度したら成績下げるから」
嫌味っぽくニコっと笑って足を進める私の背後から、「はいはい」面倒くさそうに言う声と笑った天野さんの声が響いた。



