翔のマンションで眠りについた私は冴えない気分のまま朝を迎え、冴えない気持ちのまま学校へと向かった。
ひとしきり泣いた夜。
目も充血気味で気分は最悪。
あまり寝つけなかった所為か、頭の中までもスッキリせず、あの男の事でいっぱいだった。
悩む必要なんてないと思った。
悩む事すら何もなくて、もう二度と会わないと決めた私は置いてった名刺をゴミ箱に捨て、全部なかった事の様に流し去った。
ママはどう思うのかは知らないけど、その気持ちに翔は応えてくれた。
「…新山先生」
1時間目の終了とともに向かった職員室。
そう声を掛けて来たのは数学の男の教員。
「あ、はい」
気持ちを切り替えようと思えば、目の前の教員のよろしくない表情に微かに息を吐いてしまった。
「最近、一条はどうしてるんですか?」
「はい?」
「一条奏斗。ちょっとここ数日休み過ぎで単位もないです」
「あー…」
「新山先生、担任でしたら本人にそう言う事もふまえてちゃんとして下さい」
「はい…分かりました」
「これ、補習のプリントをするように渡して下さい」
「はい。本人に必ず渡しますので」
国語教員が姿を消した後、また深いため息を出してしまった。



