「美咲の父親には変わりねぇから」
「でもっ、私は嫌」
「分かってる。もし俺の立場だったら美咲と同じ気持ちだから。でも、あの人が居なかったら、美咲の存在すら何もねぇから」
「……」
「じゃなかったら、俺は今も一人だったかも知んねぇ…」
「……」
ギュッと私を抱え込んだ翔の腕が恋しかった。
「勝手な事言ったけど、美咲が決めな。その事に俺は何も言わねぇから」
翔の胸で泣きたいだけ泣こうと思った。
最近、やけにもろい涙は簡単に流れてくる。
よく分かんない感情が私の中を支配し、心を傷める。
今更現われたって、“お父さん”なんて呼べるわけないじゃん。
だったらいっその事、このまま一生会わないでほしかった。
…私は一人でもいいから。
変な同情なんて、何もいらない。



