「…バッカみたい。なのに、一緒に住もうとかあり得ないでしょ?何で私が見ず知らずの家族に入んなきゃいけねぇんだよ!!ふざけんな!」
ふざけるのもいい加減にしてほしい。
こんな奴、父親でもなんでもない。
先に産まれたのは私だよ?
なのに女が妊娠したからって、私は捨てられたほう。
その挙句、二人もいるなんて信じらんない。
…助けてよ、ママ。
ママはこの事知ってたの?
知ってて平気だったの?
それを知って許せた?
ねぇ、ママ応えてよ。
…ママに会いたい。
「俺が言うのもなんですが、もう美咲とは会わないで頂けますか?正直、俺も美咲の気持ちが凄い分かるんで…」
「……」
「家庭があるならそっちを大事にしたほうがいいんじゃないんすか?こうやって美咲に会うと言う事は、今の家族にとってもあまり良くないんじゃないんすか?」
「……」
「まだ娘さんが小さいのなら尚更だと思うんですけど。だから、これで最初で最後にして下さい」
涙なんて出なかっても、翔の言葉で目が潤んでたのは確かだった。
俯いていた男は暫くたって小さく息を吐き捨てると、鞄の中から何かを取り出し、そっとママの遺影の横に置く。
そのまま立ち上がり、私と翔に軽く頭を下げると、そのまま玄関に足を運ばせた。
その男の後をついて行った翔の姿がなくなると、私はさっき置かれた物に目を向けた。
…名刺。
その、名刺には…
遠い遠い記憶に残っている、齋島…
以前使っていた苗字が刻まれていた。



