「もしママから聞かされていたとしても、私は会うつもりなんてなかった。現に今、アンタを父親だとは思えない」
「それはよく分かってるつもりだ」
「じゃあ何でよ!!そんな風に思ってるのなら私に会いたいなんて言わないでよ!!考えてみればおかしいでしょ!?私はアンタに捨てられてんだよ!?」
「……」
「勝手に女作って出て行ったのはアンタでしょ!?なのに今更、現われないでよ!!」
「ホントにすまない…」
過去の記憶はそう簡単に消せるものではなかった。
悲しそうにしていたママの顔を今でもよく覚えてる。
でもママは優しいから、今頃…
この男の存在を許してるんだろうか。
だけど、私は違う。
絶対に許せるわけがない。
「あの、もう一つだけ聞いてもいいですか?」
隣に居る翔は真剣な表情で男を捕らえる。
「構わないが…」
「今はどうされてるんですか?…家族は?」
「…14歳と12歳の娘がいる」
聞いた途端、驚きって言うものを飛び越えて眩暈が起きる。
光る指輪を見てそうなんかじゃないかって、少しは思った。
でも実際この男の口から聞くと、胸が苦しくなった。
額に手をあてて何も考えない様にしても記憶が舞い戻ってくる。
私の10個した。
丁度私が10歳だった時、ママが離婚をした。
原因は新しい女が妊娠していた所為。しかも二人。
…信じらんない。
ありえないでしょ、普通に考えたら。



