今更、謝ってるつもりだろうか。
手を合わせて何かを心の中で言っている男に幻滅する。
“ごめん”って、そんな言葉なんかいらないの。
“すまない”って、そんな言葉はいらないの。
今更、そんな事呟いたっても何にもならないし、過去にも戻れないし、ママはもう戻って来ないの。
なんでこのタイミングなのかも分かんない。
どうして今頃?
ママが亡くなったから来たの?
そんな理由でこられちゃ困る。
…困るんだよ。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
男が合わせた手をそっと離すと、翔は小さく問い掛けた。
「どうぞ」
「どうして亡くなられた事を知ってるんですか?」
翔が低く小さく言った言葉に何故か胸がモヤモヤとしてた。
「丁度4年前。美咲が二十歳になった年から美恵とは会っていた。と、言うのも美咲に会わせてくれと」
「……」
「だけど、美恵からそれは出来ない…とずっと言われ続けていた。留学中だと知り、帰って来たら相談してみるって言ってた矢先の事。ある知人から美恵が亡くなったと聞かされて」
そう言った男はママの遺影の前で表情を崩し、俯く。
…4年前から会っていた。
そんな事、当たり前に何も知らなくて、何も聞かされてもいない。
だからと言って、聞かされてても私は会うつもりなかんかなかった…



